第7回日本婦人科ロボット手術学会

会長挨拶

第7回日本婦人科ロボット手術学会
会長 安藤 正明
一般財団法人 倉敷成人病センター 院長

 2018年4月に良性疾患に対する子宮全摘術と子宮体癌手術にロボット支援下手術が保険収載され本邦においてもついにロボット支援下手術の幕開けとなりました。ロボットは低侵襲手術の一端を大きく担う技術ですがいくらか問題点もあります。低侵襲手術とは何でしょうか?疼痛軽減、早期離床、早期社会復帰。しかし、作業環境の違い、またその操作の困難性からやり方によっては低侵襲と言えない場合もあるのです。実際、合併症が起こってしまえば低侵襲どころではありません。新しい技術の普及し始めには必ず事故や合併症が頻発して来た歴史があります。安全着実に行うため、この手術に携わる医師は新しい手技と知識を貪欲に習得していく必要があります。「ロボット手術は簡単」という考えは捨てるべきであると考えます。私も400例の経験から、通常の腹腔鏡手術よりも困難な場面や恐怖した事象も経験しました。実際、ロボット先進国である米国でも2010年以降に婦人科ロボット手術が急速に増えた際、多くの事故合併症が報道されています。また悪性疾患に関してはいくら翌日歩けたとしても生存率が下がるようであれば有害なだけの手術となってしまい存続し得ません。そんなに面倒なものならやらなけりゃいいじゃないのという考えもあります。さて、腹腔鏡手術に比べてどこが利点なのでしょう?実際、現時点では3億円以上もかけて「操作鉗子に手首がついて体内で曲げることができる」だけの利点しかないように思われます。さらにセッティングが面倒、人手が要る、術創が大きくなるなどの問題点もあります。しかし、今後の発展性に関しては従来の腹腔鏡手術には到達できないものがあるのです。生身の人間は肉体にも知力にも限界があります。いかにトレーニングを行っても時速40km以上で走ることは困難です。しかし道具を使う人間にはそれによってperformanceを飛躍的に発展するさせる能力があります。航空業界においては100年前にやっと36.6m飛んだライトフライアー号でしたが大陸間の移動どころか今や火星にも到達する勢いです。今後AIとの組合せによりロボット技術は加速的に発展するでしょうし、すでに出来てしまった新技術が後戻りすることはありません。これを契機に医療、手術は新しい局面に急速に踏み込んでいくことになるでしょう。これらに取り組むためには真摯に技術をあげていく努力が必要です。これから多くの医療者が取り組んでいく必要がありますが、誰にでも第一歩はあるものです。早く始めた者は次世代に安全に技術が伝わるよう情報と経験を共有すべきです。そのような意味を込めてこのいただいた貴重な機会を使わせていただけたらと思います。